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事業計画書作成のポイント

事業計画の前に事業戦略

まず最初のポイントであり最も重要なのが「事業計画の前に事業戦略が必要」ということです。「図(1)経営ヒエラルキー」を見てください。

経営ヒエラルキー
図(1)経営ヒエラルキー

一番上の「ビジョン」は自分達のなりたい姿、社会がこうなってほしいという姿で、「戦略」とはその「ビジョン」を実現するために全体を設計することを指します。「ヒト・モノ・カネ」という資源には制限があり、やりたいことを全部やっていたら資源はやがて足りなくなりますよね。だから自分達の経営資源を使い、何をやるか、何をあきらめるか、を決める。そこを絞り込むのが戦略です。戦術や計画はその戦略を具体的な方法、具体的な数字に落とし込むことを指します。
 

ものづくり補助金やIT導入補助金、小規模事業者持続化補助金等、従来の補助金を使う際は、水色の計画部分が必要になり、求められるものです。例えば、販促したい、新しい機械を導入したい、というように、従来の事業の中で必要なことを計画書としてまとめます。事業そのものは変わらないため、戦略やビジネスモデルから考えなくても良く、従来のビジネスモデルの延長線上で進めることが可能です。対して再構築補助金は事業の再構築を指していますので事業自体が変わり、事業そのものを作り直す必要があります。そうなると新たな戦略、ビジネスモデルを考えなければならない。それが赤色の戦略部分であり、事業計画の前に事業戦略が必要という意味です。本来は国からも、必要なのは事業戦略書だということをきちんと伝えなければならないと私たちは感じております。まずは「事業計画の前に事業戦略」という考えを頭に入れておいてください。
 

どうやって事業戦略を考えるの?

「戦略」と言われるとぐっとハードルが上がったように感じ、少し不安を感じますよね。ただ、これは必要であると共に、皆がワクワクするようなことでもあります。色々考えていくうちに未来が見えてきて、むしろ不安より期待が膨らみます。

手順としては、下記の通りです。

  1. 自社の経営資源、特徴や強みを確認する

  2. 潜在ニーズを発見する

  3. 潜在ニーズを満たす商品・サービスを考える

「今、こんなニーズがあるなら、自社の強みや特徴を活かし、こんな商品やサービスで応えていけるのではないか?」そのようなことを考えていきます。そして、それが本当にやっていけるのか?それを検討するために推奨しているのは、私たちが独自に作り出したフレームワーク「AB3C分析」を使った戦略の検討です。
 

AB3C分析
図(2)AB3C分析

「図(2)AB3C分析」を見てください。これは大前研一さんが考案した3C分析、顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)との関係性の中に、お客様が求める価値(Benefit)差別的優位点(Advantage)という2つの考え方を追加したものです。

  • お客様が求める価値(Benefit)
    お客様が本当に求めている価値は何か?
    例えば健康食品が欲しい人が本当に求めているのは、商品そのものよりも健康になりたいということかもしれない。それならば考えられる競合は似たような健康食品だけでなく、健康器具やフィットネスクラブ等も入るかもしれない。
     

  • 差別的優位点(Advantage)
    競合と比較された時の差別的優位点は何か?
    差別的優位点とは、単なる優位点ではなく、そのお客様が求めていて、競合にはない優位点です。選ばれる理由とも表現します。例えば、「うちの健康食品は健康成分に加えて美容成分も入っている、競合はやっていない」という場合、美容成分をそのお客様が求めていなければ差別的優位点になりません。

この2つを考えて埋めるのはなかなか大変ですが、この2つが埋まり、自社はこの2つに応えていける、となった場合、戦略が成立すると考えられます。「あなたの求めているものはここにありますよ」「競合と比較した時に私たちが選ばれる理由はこれです」と伝えていくことができ、それにより、ターゲットとするお客様に選ばれるようになります。AB3C分析については、以下の「動画(1)AB3C分析」動画もご参考ください。

動画(1)5分でわかるAB3C分析

そして、そこから想定している商品やサービスを具体的に掘り下げていくことになります。ただ、本当にその戦略は成立する?と不安になることもありますよね。私たちはこのAB3C分析を行う際、お客様、自社、競合について、あらゆる調査・分析を行った上でまとめています。なので、その調査・分析のお話も少しご紹介しますね。

調査・分析で根拠を示す

先にも記載した通り、その戦略は本当に成立するのか?という点では根拠を示す必要もあります。そのために、
 

  • お客様(市場ニーズ・市場規模)

  • 自社

  • 競合
     

の3点においていくつかの調査・分析を行ったりもします。ただ、すべてをやるのは専門ではない方達にとって敷居が高いと思いますので、まずはお客様(市場ニーズ)だけは確認しておくとよいでしょう。申請時に事務局を納得させる根拠にもなりますし、勿論、自社の戦略の裏付けにもなります。お客様(市場ニーズ)の調査・分析手順としては下記の通りです。
 

  1. 検索キーワードの調査・分析

  2. ​キーワードのグループ化

  3. 消費者作成コンテンツの分析
     

​以下、詳しくご紹介していきますね。

1.検索キーワードの調査・分析

今回ターゲットと考えているお客様が検索しそうな検索キーワードのボリュームやバリエーションを確認します。ツールとしておススメなのが、「KeywordTool」というものです(有償版でないと見えない範囲もあることをご了承ください)。「図(3)検索ボリューム」をご覧下さい。KeywordToolにて、該当のキーワードで毎月どれ位の検索数があるか、年間トータルどれ位のボリュームか、季節変動はどうか、等を確認することができます。

​事例の図はGoogle検索検索結果についてですが、他にも、YoutubeやAmazon、X、Instagramでの検索について調べることもできます。これにより市場規模が何十万なのか万なのか千なのか、おおざっぱな市場規模を把握することができます。例えば月に1万の検索があり、上位表示で10%訪問したら月1000人の訪問、その訪問者の1%が購入や契約に結び付けば成果10人というイメージです。

検索ボリューム
図(3)検索ボリューム

2.キーワードのグループ化

そして検索キーワードのバリエーションも見ることができます。「図(4)キーワードのグループ化」を見てください。色々な目的を持ち検索しているでしょうから、それぞれのユーザーの目的がさまざまかと思います。これを、同じ目的を持つだろうキーワードでグループ化していくことで、どんなユーザー像がいるのかを把握することが可能になります。「主要キーワード」+「キーワード」に「安い」「相場」「価格」等を含む検索は、価格や安さを重視しているユーザーグループと考えられるので「値段」といった1つのグループにまとめます。

 

一方、「主要キーワード」+「キーワード」に「東京」「大阪」「横浜」等、地名を含む検索は、実店舗を探していることが考えられるので、「都市名」や「実店舗」といった1つのグループにまとめます。このように、同じ目的をもつだろうキーワードをグループ化していくことで、どんなユーザー層がいるのかを整理・把握することができます。

キーワードバリエーション
図(4)キーワードバリエーション

ちなみにキーワードグループ化の事例は「図(5)グループ化したユーザーモデル」をご参照下さい。バラバラと色々なユーザーが想定される中で、何を目的としたユーザー像かということが綺麗に分類できました。私たちはこれをユーザーモデルと呼んでいます。そして、このユーザーモデルの中で、どのユーザーモデルをターゲットとしていくのかを考えていきます。ターゲットモデルが複数あっても問題ありません。但し、その場合は、そのユーザーモデルでAB3C分析での戦略が成立することが条件です。

グループ化したユーザーモデル
図(5)グループ化したユーザーモデル

3.消費者作成コンテンツの分析

このように、ユーザー像をある程度分類してユーザーモデルができたら、そのユーザーモデルが本質的に何を求めているのか、を知りましょう。AB3C分析でご紹介した「お客様が求める価値(Benefit)」を知る作業です。これを知るには、やはり実際の当事者の声をできるだけ多く聞くのが良いですが、多くの遠く離れた方々の声を聞くのはなかなか困難です。そこで、情報が溢れているネット上で探します。ネット上には今、多くの消費者作成コンテンツが溢れています。SNSやYahoo知恵袋、お客様の声やレビュー等、そうしたものを見ながら、そのユーザーグループが本質的に何を求めているのかを探っていきます。

消費者作成コンテンツ
図(6)消費者作成コンテンツ

「図(6)消費者作成コンテンツ」はYahoo知恵袋で該当のユーザーモデルがどんなことを考えているのか探ったものです。SNSやYahoo知恵袋、お客様の声やレビューには、あらゆるユーザーの声、悩みや疑問、願いや想いが詰まっています。「こんな悩みを抱えているならこんな風に解決してあげられるかも。」といった現状課題の把握と共に解決案が閃いたり、「こんなに多くの人がこんなことを気にしているなら、自社の強みを活かした新たなサービスで応えていけるのではないか。」といった新たなアイディアも浮かんできます。ぜひ、消費者の声に触れ、実態を把握してください。​それに対して、自社の特徴や強みを活かし、どのように応えていけるかを考えていきましょう。

具体的な計画を立てる

調査分析も終え、事業戦略が固まったら、あとはそれを事業計画書にまとめていきましょう。その際、具体的な計画を立て、それを明確に伝えることが重要です。

  1. なにをやるのか

    まず、実現しようとしている具体的な商品やサービスのイメージを明確に伝えましょう。商品であればどのような特徴を持った商品なのか、サービスであればどのようなサービスなのか、なぜそれを作るのか、それにより消費者はどんなメリットが得られるのか、等。イラストや写真等を入れるとより伝わりやすくなります。
     

  2. なにが必要なのか
    新たな商品・サービスを実現するために何が必要なのかを洗い出します。例えば、その商品をネットで売るためにECサイトを制作する必要がある、そのサービスを実現するために社員教育が必要になる、等。
     

  3. いくら必要なのか
    上記の「なにが必要なのか」にリストアップしたものがいくら位かかりそうかを見積もります。応募申請時はざっくりとした概算見積もりでも大丈夫です。申請が採択された後、交付申請という手続きで実際に見積もりをし相見積もり書等の提出が求められます。この時、具体的な金額が決定するようになります。
     

  4. どのように回収するか
    事業再構築補助金の要件に、収益増加が見込めるということを示すことが求められます。そのため、5年分の収支計画をまとめておきましょう。
     

  5. 実施スケジュール
    これが結構重要です。採択後、約1年以内にその事業を実現する必要があるため、何をいつまでに誰がやるのかといったスケジュール表を必ず作っておきましょう。

事業計画書を書いてみよう

事業計画書作成のポイントを掴めたら、実際に事業計画書を書いてみましょう。

こうした戦略を考えて事業計画書をまとめるのが難しい場合は、以下「事業計画書作成支援サービス」もご利用ください。

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